更新日: 2026.02.20

季節の健康コラム

治療で予防できる時代
大人の喘息発作

医学博士 植地 貴弘さん

喘息発作の現状と現在の治療方針

ここ数年、「喘息発作で救急外来に来る人が減った」と感じる医療者は少なくありません。喘息そのものがなくなったわけではなく、重い発作や喘息により亡くなる方が減ってきた、というのが現在の姿です。かつて日本では喘息で年間数千人が亡くなっていましたが、治療の中心が“発作止め”から“炎症を抑える治療”へ移ったことで、長期的に状況が改善しました。
喘息は気道に慢性的な炎症が続く病気です。発作が起きたときに、気管支拡張薬(いわゆる発作止め)だけだと、その場は楽になっても炎症が残り、再燃や重症化することがあります。近年の国際指針(GINA2024)では、発作止めだけに頼る治療を避け、吸入ステロイドを基本に、必要に応じて吸入ステロイドとホルモテロール(即効性のある長時間作用型気管支拡張薬)配合薬「シムビコート®」を“ふだん+症状時”に使う方法が第一選択として推奨されています。症状が出た時に、気管支を広げるだけでなく、炎症も同時に抑える発想が、発作予防のカギです。

発作を起こさないためにできること

喘息の予防でいちばん大切なのは、気道の炎症を日頃から抑えることです。その中心になるのが、吸入ステロイドです。「ステロイド」と聞くと不安を感じる方もいるかもしれませんが、喘息で使うのは飲み薬ではなく、気道に直接届ける吸入薬が基本です。全身に回る量は少なく、医師の指示どおりに使えば安全性は高いとされています。
もう一つ大切なのが、原因へのアプローチです。日本の喘息、とくにアレルギー型では、室内のハウスダスト(主にダニ)が大きな引き金になります。掃除や寝具の工夫は有効ですが、完全に避けるのは現実的に難しい場合もあります。そこで注目されるのが、ダニへの舌下免疫療法です。毎日少量のアレルゲンを舌の下から取り入れ、体質(免疫の過剰反応)を徐々に落ち着かせる治療で、アレルギー性鼻炎を合併する喘息では、症状の悪化を減らす効果が期待されています。即効性はありませんが、続けることで発作を起こしにくい状態を目指せるのが特徴です。
息切れや咳が続く、季節や掃除で症状が悪化する、夜間や早朝に症状が出る、発作止めを頻繁に使っている─こうした方は、我慢せず、専門医に相談してください。喘息は“治療で予防できる病気”です。正しい診断と、炎症を抑える治療、必要に応じた免疫療法を組み合わせることで、日常生活の不安は大きく減らせます。