季節の健康コラム
声帯トラブル改善の鍵は鼻?
声のかすれ

医学博士 植地 貴弘さん
声のかすれの原因と注意点
声のかすれ(嗄声)は、声帯そのもののトラブルや使い過ぎ、生活習慣など、さまざまな要因によって引き起こされます。たとえば、声帯に炎症や結節、ポリープがあると、声帯の振動が乱れ、クリアな声が出しにくくなります。結節とは、声帯に「たこ」のような硬い組織ができる状態のことで、ポリープとは、声の出しすぎや炎症、喫煙などによって声帯の辺縁が突出し声の変化が起きる病気です。長時間声を使う人や、喫煙習慣のある人は喉に負担がかかりやすく、声のかすれが慢性化しやすい傾向があります。特に、声の不調が2週間以上続く場合は、ポリープや声帯結節だけでなく、慢性喉頭炎、まれには喉頭がんなど、他の疾患が隠れている可能性があるため、早めに耳鼻咽喉科を受診し、検査を受けることが推奨されています。
後鼻漏と声のかすれの関係
一方、声のかすれが起こる背景には後鼻漏が潜んでいる場合もあります。後鼻漏とは、鼻水が鼻の奥から喉へ垂れ込んでしまう状態のことで、アレルギー性鼻炎や副鼻腔炎、風邪などがきっかけとなりやすいのが特徴です。喉へ流れてきた粘液によって喉の粘膜が刺激されたり、炎症が長引いたりすると、声帯の不調が続き、声がかすれやすい状態が続いてしまいます。
鼻うがいによる改善と予防方法
後鼻漏の軽減に有効とされているのが「鼻うがい(鼻洗浄)」です。ドラッグストアなどで入手できる専用の洗浄キットや生理食塩水を使い、片方の鼻孔から液を入れ、もう片方の鼻孔もしくは口へ流し出す方法が一般的です。蛇口から出るお湯500mlに5gの塩(小さじ1杯)を溶かすことで、濃度1%の生理食塩水を作ることができます。体温に近い40℃前後の温度で作ると、違和感なく鼻うがいできます。正しいやり方を身につければ、鼻腔や副鼻腔に溜まっていた鼻水や花粉などのアレルゲン、ウイルスや細菌を洗い流せるため、後鼻漏による喉の不快感や声のかすれが改善しやすくなるだけでなく、風邪対策としての有効性も示されています。また、花粉症の時期には、上述したように花粉が洗い流され、自宅での花粉症の症状が改善されるので、帰宅時に行うのが良いでしょう。
鼻うがいのやり方
専用の洗浄キットや生理食塩水を、片方の鼻孔から液を入れ、もう片方の鼻孔または口へ流し出します。

生理食塩水のつくり方
40℃前後のお湯500mlに5gの塩(小さじ1杯)を溶かす