マネージャーナル
2028年に改正が予定される
遺族厚生年金

新井 智美さん
ファイナンシャルプランナー(CFP )/1級ファインナンシャル・プランニング技能士/DC(確定拠出年金)プランナー/ 住宅ローンアドバイザー/証券外務員
遺族厚生年金の見直しの背景
2025年6月に「国民年金法等の一部を改正する法律案」が成立し、遺族厚生年金の制度も見直されることになりました。実際に施行されるのは2028年4月と少し先ですが、将来の備えとして今から内容を把握しておくと安心です。
遺族厚生年金とは、厚生年金保険に加入していた人が亡くなった場合に、その遺族へ支給される公的年金です。今回の改正で焦点となったのは、子どもがいない配偶者への対応です。現在の制度では、子どもがいない妻が夫と死別した場合、30歳未満の妻であれば、5年間の期限付きで年金が支給され、妻が30歳以上であれば無期限で支給されます。一方で、子どもがいない夫が妻と死別した場合は、夫が55歳以上でなければ支給対象とならず、支給開始も60歳からです。
このように男女差があるのは、「女性は専業主婦として生活するのが一般的」という当時の家族像を背景に制度が設計されたことにあります。しかし、現在は女性の就職率も上がり、共働き世帯が増えています。現代の家族構成や働き方の変化にあわせて男女の不平等感を解消するため、今回の改正に至りました。
改正後の内容と対象者
改正後は、60歳未満で配偶者と死別した子どもがいない妻・夫は、いずれも原則5年間の有期給付となります。60歳以上であれば給付期間は無期限です。ただし、遺族厚生年金の受給者が障害年金を受けとっていたり、収入が低かったり、配慮が必要な場合には、5年目以降も継続して年金を受け取ることができます。また、有期給付には新たに加算(有期給付加算)が上乗せされるため、受け取れる年金額は、現在の約1.3倍になります。
今回の改正の影響を受けるのは、子どもがいない60歳未満の妻または夫が受給者となるケースです。改正前から受給している方や、60歳以上の妻または夫、2028年に40歳以上になる妻は改正の影響をうけません。
この改正は男性に対しては2028年4月から実施されるものの、女性に対しては同年4月から段階的に実施される点に注意が必要です。受給対象となった際には、年金事務所への申請も忘れないようにしましょう。

- いずれも、子どものいない場合(※子どもとは、18歳になった年度末までまたは障害の状態にある場合は20歳未満の方をいいます)