更新日: 2025.07.31

季節の健康コラム

早めの治療で重症化を防ぎましょう
インフルエンザ

医学博士 植地 貴弘さん

インフルエンザの特徴と重症化を防ぐ対策

インフルエンザは毎年冬(12~3月)に流行する急性のウイルス感染症で、38℃以上の急な発熱や関節痛、強い倦怠感、咳・鼻水などが特徴です。症状だけでは新型コロナと区別がつきません。インフルエンザは新型コロナと異なり、発症後に人に伝染するので、発熱時には無理をせず休養し、マスクや手洗いを徹底して他人への感染拡大を防ぐことが大切です。
特に重症化しやすいのは、65歳以上の高齢者、2歳未満の乳幼児、喘息・糖尿病・心疾患などの持病がある方、妊婦や免疫力の低下している方です。これらの方々は、肺炎や脳炎を引き起こすことがあり、最悪の場合、命に関わることもあるため、流行前のワクチン接種が重要です。

発症と重症化を予防するワクチン

インフルエンザワクチンは毎年、流行が予測されるウイルス株に合わせて内容が見直されます。2025~26年の日本のワクチンは、A型2種類(H1N1、H3N2)とB型ビクトリア系統1種類が含まれています。これまで含まれていたB型山形系統は、2020年以降ほとんど検出されていないことから、今後ワクチンから除外される方向です。
ワクチンには「発症予防」だけでなく「重症化予防」の効果もあり、ウイルス株が一致した年には発症を40~60%減らすとされます。効果は接種から約2週間で現れ、半年ほど持続します。また、従来の注射型に加え、近年では鼻にスプレーする「経鼻ワクチン(生ワクチン)」のフルミスト®も登場しました。これは2歳~18歳の健康な子どもが対象で、自然感染に近い形で免疫をつける仕組みです。注射が苦手なお子さんにも接種しやすく、鼻の粘膜で免疫を誘導するという利点がありますが、喘息や免疫疾患がある場合は使用できないため、事前に医師と相談しましょう。
感染した場合は、発症後48時間以内であれば抗インフルエンザ薬(オセルタミビルなど)を使うことで、重症化のリスクを減らすことができます。特に高リスクの方は、早めの受診と治療を行いましょう。
現在では、薬局などで購入できる同時抗原検査キット(インフルエンザ・新型コロナ対応)も普及しており、自宅で陽性を確認して診療につなげるケースも増えています。大切なのは「発熱したら無理をしない、人にうつさない、必要なときは早めに相談する」こと。今季もインフルエンザに備えて、ワクチン接種と基本的な感染対策を忘れずに、安心して冬を迎えましょう。

フルミスト®とは

  • 対象年齢:2~18歳
  • 接種回数:どの年齢も1年に1回
  • 摂取方法:両方の鼻に1回ずつ噴霧
  • 接種できない人:妊婦、免疫抑制剤を服用中の方など
  • 副反応:鼻水、鼻づまり、せきなど